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荻久保次郎フォトアート2
'17 草月ホール_Aranfez_
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☆私のフラメンコ

 私を捉えて離さないフラメンコの魅力とは···

長年この道を歩き続けながらよくそのことを自問自答してみます。その時々によって多少の違いこそあれ、揺らがないことははっきりあります。言葉ではとても表現しづらいのですが、ここでお話ししてみたいと思います。
まずは何と言ってもその神秘的なところ。一つのふとした動きや音にどれだけのことを感じさせられることでしょうか。またそれは人によって感じ方がまちまちですから言葉よりも微妙な感情を表すことがで出来るものなのだと思います。哀愁を帯びたギターの旋律、どうしようもない切なさを感じさせる唄、そしてそれに呼応して行く踊り···
三者の間に無言のやり取りが繰り返され、えも言われぬ“間”が生まれます。
そんな時、ああフラメンコって素敵だな、と思います。

 そしてまたそのドラマティックなところ。三者の繰り広げる音のうねりは緩急がはっきりしていて実にダイナミックです。知らず知らず引き込まれて行きクライマックスに至る時には見る側も心から”Ole(オレー)”と
声にしてすごいエネルギーを体に宿すような··· 不思議です。
 そしてまた、野生的でありながらエレガントであるところ。例えて言えば黒豹のような感じでしょうか。
 また一方では妖艶であったり潔さがあったり···人間味に溢れているんですね。

こうして書いてきたことは私が感覚的に捉えているフラメンコです。
本来遠く昔にインドを発祥の地としてシルクロードを通ってスペインの南部に着いて今の形となったというフラメンコ。それは実際その地での暮らしの中から紡ぎ出されたもので、その地でなければ感じ得ないことも沢山あります。深く刻まれた歴史に加え、日々の空気、空や大地、数々の祭りや年中行事を過ごしながら交わされる人々の会話そして生き様。それらを土台に出来ているのだとつくづく思わされます。
ですがふと気付くと今や世界各国の人々がこの芸術を愛し、年々そうしたフラメンコファンがあちこちに増えて彼ら自身が演奏したり踊ったりしている現実を目の当たりにします。それを見ると、これはやはりスペインのみならず多くの人々がきっとフラメンコに内在している多くの人間的な要素にも魅せられているように思えてなりません。

 私は初めて聞いたカスタネットと靴音に『これはすごい!』と思ったのがきっかけで長い年月この道を歩いてきました。沢山の素晴らしい方々との出会いがありお陰さまで続けて来ることが出来感謝の限りです。
スペインに憧れて憧れてやってきた事を、今は一人の人間として素直に表現して行きたいと思っています。
言語を越えて人々と共感を持ち合えることが出来れば、こんなに素敵な事はありません。

                        入交恒子

 

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